2018年3月
日本機械学会 発電用設備規格委員会
委員長 加口 仁
発電用設備規格は,主に火力および原子力発電プラントの機械設備(機器,配管等)を安全に設計,製造,運転,維持するために定められています。このような構造材料規格は,規格制定以前に多くのボイラ事故が発生し人命,財産が失われたことから,米国機械学会(ASME)で自主的な民間基準ができたのが発端と言われています。その後,原子力エネルギーの平和利用を進めるため,原子力プラントの構造規格が追加され,ASME Boiler and Pressure Vessel Codeとして整備・活用されています。
日本では,ASME規格を参考にしつつ,国による省令,告示,あるいは通達というような形で,規格・基準が制定されてきました。しかし,これらの規格・基準を作る上では,実際の製品,技術を理解した専門家の知見を必要とし,国による規格の発行,改定という方式ではタイムリーな最新知見の反映,ユーザーのニーズの反映と言う点で問題がありました。このため,国が性能規定(要求規定)を定め,民間が仕様規定(運用にあたっての詳細な規定)を作成することとなり,このうち,設備の構造健全性に関わる規格を発電用設備規格委員会が民間機関として制定しています。
このような背景の下,本委員会には,材料,設計,製造,建設,試験検査,運転,維持等の専門家が集まり,火力及び原子力発電に使用する設備が,「安全」でかつ「合理的」に製造,使用され,信頼できる経済的な電力を安定して国民の皆様に供給できるように,規格類を継続して整備・拡充しています。
東日本大震災に伴う福島第一発電所の事故の反省も踏まえ,本規格委員会は以下に留意しつつ,今後も活動して参りますので,御理解と御支援をよろしくお願いします。
1. ニーズと最新知見のタイムリーな反映
今後とも発電プラントの安全性の向上のために,新たな規制要求が出てくることが予想される。これに対して,具体的な仕様規格をタイムリーに策定していく。さらに,最新の技術的知見を反映し,自主的な安全向上に寄与する規格の高度化を進める。
2. 技術者の育成
若手技術者が単に規格ユーザーとしてだけではなく,規格委員会の専門委員会,分科会,作業会に参加し,規格を提案,整備,制定していくことにより,その背景となっている技術(構造強度,保全技術,製造技術等)を真に理解し,我が国のインフラを支えるエンジニアに育つことを期待している。そのようなエンジニアが規格を正しく適用することにより,安全性は大きく向上することが期待する。このために,自由で闊達な意見交換が行われる開けた委員会活動を目指す。
3. 規格のエンドース推進と国際化
本委員会で制定された規格が広く使われるためには,規制側にエンドース(認定)される必要がある。このために,「公正」,「公平」,「公開」の精神に基づき,定めたプロセスに従って議論を尽くして規格の整備を進め,また,規制側への丁寧な説明を行っていく。
また,同時にASME等の海外の規格制定団体との交流を深め,最新知見を拡充するとともに,日本側からの発信も積極的に行い,国際的な規格基準の高度化に貢献していく。
以 上